農地法許可に付随する手続き(その1)

①所有者に相続が発生している場合

 土地に関する権利は様々なものがありますが、最もわかりやすいのは、所有権です。農地転用の許可申請を行う際には、当たり前ながら、その農地が誰の所有物であるかがハッキリしていなければ、転用の許可申請はできません。
 不動産の所有者を調べるうえで最も早いのは、登記記録を調べることです。

 ここで、少し不動産登記の基礎的なお話をしたいと思います。
 不動産登記では、土地と建物について、その物理的な状況を示した表題部と、誰がどのような権利を持っているかを示した権利部にわけて、法務局で記録をしています。この記録は、手数料を納めれば誰でもその写しの交付を受けたり、閲覧ができる仕組みになっています。


 この土地と建物の登記記録のうち、建物の登記記録は、現存する全ての建物が登記してあるわけではありません。建物の登記記録は所有者等からの申請によって作られるため、特に建築後に所有者等が登記等を申請しない限り、登記記録が自動的に作成されることはほぼありません。
 法的には、建物を建築したら登記をしなければならないことになっていますが、金融機関の融資を受けて建築した建物であれば、担保に入れるために登記を必ず行うものの、自己資金で建てた建物は、登記をしなくてもすぐに困ることがないため、登記をされないことがままあります。


 また、登記されている建物を取り壊した際も、その旨を登記申請しない限り登記記録は残ります。固定資産税の課税については、市町村の税務課などに申告すれば止めてくれるので、仮に登記記録が残り続けてもやはりすぐに困ることはありません。そのため、現存する建物が未登記であることがある一方で、すでに現存しない建物の登記は放置されて残っている、ということが非常によくあります。


 これに対し、現存する土地の登記記録がない、ということはまずありません。少子高齢化が進んだ今の日本でこそ、市街地から離れたような位置にある土地の所有権が重荷になりつつありますが、もともと土地は高価なもので、日本の経済発展が著しかった1980年代後半までは、土地は値上がりを続ける優良な投資の対象物でした。
 だからというわけではありませんが、およそ人が立ち入ることができるような場所にある土地は、全て登記記録が備わっています。そのため、土地のある場所さえわかれば、その土地が誰のものであるかは、登記記録ですぐにわかるようになっています。

今回は以上になります。ありがとうございました。

→「行政書士古川元一事務所